9 普通教育の理論化のために

1)普通教育概念が理論概念になるためには仮説・実践・検証という試練を経なければならない。

 ここで仮説とは「子ども自身の内部に理性に発展していく諸能力が存在していることに着目して、教育的指導によってそれら諸能力を人間にふさわしい理性へと育成する社会的営みは普遍的な事実として社会的に確認でき、かつそれらの社会的諸事実に発展法則を認めることができるのではないか」と提起しておきたい。今日、歴史的現実的実践の分析や総括を通して普通教育概念は理論化が可能な段階に入っていると言えよう。

 普通教育概念は理念・目的・目標をはじめ教育課程、内容、方法、制度、財政、政策、運動、歴史などから構成される包括的な概念である。

2)普通教育が生成し存在するための歴史的社会的諸条件が存在すること。

 ・「人間」に内在する諸能力を育成することによって人間的理性の育成は可能であるとする思惟が存在すること。

 ・「人間」を育成するための独自の社会的営みが不可欠であるとする思惟が存在するとともにそれを実現していくための社会的勢力が存在すること。

3)普通教育が制度的に発展していくためには憲法や基本的な教育法制において基本的につぎのような規定が定められていること。

 ・憲法において国民主権原理が規定されていること。

 ・憲法において国民が教育を受ける権利を有することが規定されていること。

 ・憲法や条約批准等によって普通教育を受けることが子どもの権利であると事実上定められていること。

4)基本的な教育法制等において以下のような規定があること。

 ・教育もしくは普通教育の理念・目的を基本的に「人間の育成」としていること。

 ・「学問の自由の尊重」、「機会均等」、「奨学制度」、「男女共学」などが規定されていること。

 ・普通教育の範囲、修業年限、無償制などが規定されていること。

 ・普通教育を実施する学校は公的性格を有していることについての規定があること。

 ・教員の身分・待遇等の尊重、専門性の確保、研修権等についての規定があること。

 ・基本的な教育課程の枠組み、教科書制度、教育内容の大綱的基準等を策定する政府から独立した学術的専門機開についての規定があること。

 ・教育行政は教育条件・教育財政等の整備に限定し、国民に直接責任を負って行われるべきものであることについての規定を有すること。

5)一斉授業方式など伝統的な教育方法や競争原理・能力主義に基づく教育方法等を克服し、子どもたち相互が教師の指導のもとで学びあい、助け合う学習形態、教育方法等を基本とすること。

6)普通教育の理念に立った教員養成制度が確立していること。

7)文化、教育、メディア、芸術、スポーツ等さまざまな関係団体、地方公共団体、教育委員会、地域社会、施設、家庭等が普通教育の理念・目的を共有し、それぞれの立場から普通教育の実現に関与し、かつ協力・共同できるシステムを構築すること。